最高の法螺話『屍者の帝国』

伊藤計劃が遺した作品を円城塔が引き継いで書くというトンデモな経緯を持つこの本、あとがきを読むに出版社の担当者が持ちかけたとのことで、そりゃあそうか。亡くなった人間の作品を、自ら名乗りを上げて書くような人間はいない。好きな作家がそういうことをしていたら幻滅する。

正直なところ私は円城塔の作品をあまり読んだことがない。なんというか、文体に苦手意識があるような。読もうと思って借りたものの読みきれなかった記憶がある。

漠然としたイメージしか持っていないので本作での文体を伊藤計劃に寄せていたのか本人のものなのかは分からないが、描写に名詞が多い気がする。おかげでその場で繰り広げられる場面が目にありありと浮かぶ。そういう本には映画を見ているようだ、と言いたくなってしまう。

 

 

この本、初めて読んだときは高校を卒業してすぐだったような気がする。あの頃は世界史の知識も新鮮だったから歴史改変ものである本作をワクワクしながら読んだものだが、もはや世界史の知識が錆び付いている今はクリミア戦争露土戦争の背景を思い出せない。それでも十分に面白く読めたが、知識があった方が"分かる"ような匂わせも本文中にはあったのではないかと思う。

逆に初めて読んだときはディファレンス・エンジンを知らなかった。解析機関チャールズ・バベッジだとかグラン・ナポレオンが出てきてワクワクした。正直なところディファレンス・エンジンの内容もあまり覚えていないのだが。本作と同じく文明開化中の日本人が数人現れることくらいしか思えていない。そして臭いテムズ川、霧に包まれた非常事態のロンドン。マロリーがどんな人物だったのかも覚えていない。

ただ作品の構造は覚えている。文庫版だと帯にネタバレが書いてあって最悪なのだが、本作がリスペクトしていることが分かる。

 

情報の具現化と聞くと少し違うけどエウレカセブンのスカブ・コーラルを思い出してしまうんだよな。情報が集積しすぎて"件の限界"と呼ばれる基準にまで達すると物理宇宙が崩壊しちゃう!という話(盛大すぎるネタバレ)なのだが、情報体スカブも夢を見ていた。本作では、グラン・ナポレオンは夢を見ている、というか具体化した情報が歯車を狂わせるとかいうトンデモ設定がありましたけれども。

エウレカと本作でにている部分は全くないのだが思い出したというだけの話でした。

 

そもそも情報の具現化なんて話はトンデモ設定なのだがとてもワクワクする。

 

ところでエピローグを読んでいて思い出したが出版社がやっている伊藤計劃不死プロジェクトの一環でアニメ映画化されているんだったな。キャラデザを見てみたけれどフライデーが思ったよりも生きていた。私の中で"屍者"というとガイコツっぽさが強かったのだが、確かに人間っぽさはあるよなあ。人間っぽいものが人間に追いつけていない動きをするから気持ち悪いのであって、ガイコツがフランケンウォークをしていたらそれだけだもんな。

他はオタクに媚びないデザインで暇だったら見てみようという気になった。

 

ハーモニーの映画はみたけど虐殺器官は観てないなあ。それ以外にも今敏作品みたいな観たいアニメ映画は多いのだが、プライムとかには基本的にないから観ていない。

 

屍者の帝国 (河出文庫)

屍者の帝国 (河出文庫)

 

 

屍者の帝国

屍者の帝国

  • 発売日: 2017/04/22
  • メディア: Prime Video